耐摩耗の重要性
私たちの身の回りでは自動車、産業機械、建築などあらゆる分野で、多くの金属製品、構造材が使用されています。これらは使用に際して十分な強度と、安全性、耐久性の確保がなされていますが、それでも予期せぬ破損は少なくありません。 破損は、変形、破壊(延性破壊、衝撃破壊、疲労破壊)、摩耗などに分類されます。変形、破壊は発生時期が予測し難く突然起こりますので危険度も大きく、大事故に繋がるケースもあります。
摩耗は、進行状況が目に見てわかりやすいので、一定の使用期間後に寿命が来ることを前提に使われていることが多いので、危険度としては比較的低いように思われがちです。
しかし、予定どおりの寿命であっても、わずかな使用時間で寿命が来てはメンテナンス回数が増え、費用がかさみ、ランニングコストに大きな影響を与えます。コスト削減がより強く望まれるようになり部品一つ一つの耐久性の向上が望まれています。
耐摩耗溶射とは
高炭素鋼、サーメット、セラミックを加工物の対象範囲に施工し、機械的耐久性の向上を目的とした表面処理です。近年では高温環境下(450℃以上)での耐摩耗性、腐食環境下での耐摩耗など摩耗と腐食の両方から守る高機能材料の開発が進み、更なる耐久性の向上が見込めます。
サーメットとは
サーメット(Cermet)とはセラミックス(Ceramics)と金属(Metal)の両者からなる材料の事を示した造語であり、セラミックスの持つ硬質性と金属の持つ強靭性を兼ね備えた画期的な材料です。
溶射に用いられるサーメットはWC(炭化タングステン)系及びCrC(炭化クロム)系が多く、CrC系はWC系の適応が困難な高温・高酸化環境で多く用いられています。
セラミックスとは
溶射としては殆ど酸化物が使用されています。
耐摩耗溶射のメリット
- 様々な形状に対応できる。
- 部分的に施工できる。
- 材料の選択肢が多い
- 基材への熱歪による影響が少ない。
- 施工対象に制限が無い
- 皮膜厚さが自由に制御できる(数10μ~数mm)
- 成膜速度が極めて速く、施工時間が短い